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 やるせない想いを抱えて、夜の街を歩く。冷たい北風が、それに追い打ちをかけるようだ。こんな日は一人でいたくない。タカもユージも、そう思わずにはいられなかった。

 仕事を終えた二人は、タカの部屋に戻っていた。

 リビングの窓から横浜の夜景を見下ろしながら、ユージは呟くようにタカを呼んだ。

 「タカ…」
 「なんだ」

 すぐさま返された返事に、ユージは却ってうろたえる。
 「なんでもない…ごめん」

 その様子にため息をついて、タカはソファから立ち上がる。ユージを背中からゆったりと抱きしめる。

 「なに?」
 「俺の相棒は、ここにいてくれて良かったと思ってな」
 「…タカ」
 ユージはいつになく素直に、タカの腕に納まっていた。温もりを分け合うように、互いに身を寄せる。

 「俺より先に死ぬなよ、タカ」
 冗談めかした口調で、ユージが言う。ガラスに映った瞳の色だけが、彼の本気を伝えていた。

 「それは俺のセリフだ。お前がいなくなったら、俺はブチ切れて荒れ狂うぞ」
 タカの深みのある声が、ユージの耳元に熱く注ぎ込まれる。

 「あぶない奴だな」
 微笑いながら振り返って、ユージはタカと向き合う態勢を取った。ゆっくりとタカの首に両腕を回す。

 タカの手がユージを引き寄せる。どちらからともなく唇が近づいていく。触れあうだけの優しいキス。

 「俺が凍えちまわないように温めてくれ、ユージ」
 「それはいいけど、タカも俺を温めてくれる?」
 「もちろんさ。その役は誰にも譲らない」

 微笑みあって、もう一度口づける。

 互いを抱きしめる腕、温もりを与え合う身体、そして愛しい想いが在る限り、二人が心を凍らせることはないだろう。

 「ユージ、抱きたい。お前が欲しい」
 柔らかな笑みと真摯な瞳に魅せられる。ユージはこてんと額をタカの胸につけた。

 「少しは加減しろよ。明日も仕事なんだからな」
 「少しでいいのか」
 タカはそう言いながらユージを軽々と抱き上げて、そのまま寝室へと運んでいった。
 「いいんだよ、俺だって欲しいんだから」

 ユージの手が、寝室のドアノブを掴む。
 「…加減できなくなりそうだ」
 「少しはしろよな」
 「はいはい」
 戯れのようなやりとりを楽しみながら、二人の情が高まっていく。



 パタンと軽い音を発てて、秘められた世界に続くドアが閉ざされた。


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